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デザイン

2020.06.26

特許庁が推す「デザイン経営」とは何か(解説)

前のブログの続き

そもそもデザイン経営とは..

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。

と、特許庁は言っておられますね。

つまり簡単に言うと
「デザインを使い、試行錯誤しながら課題の解決を見出すこと」です。

そもそも経済産業省・特許庁は2017年から「産業競争力とデザインを考える研究会」等を行っていて、 2018年に報告書『「デザイン経営」宣言』を取りまとめていました。

「デザインっていろんな課題を解決し得るんだよ」

って宣言したということです。(特に経営者に対して言ってるようです。)

デザインを使い、試行錯誤しながら課題の解決を見出すことは、
ブランドの向上やイノベーションを起こすことにつながり企業を強くする。

ということです。

そのために、

① デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
デザインを企業戦略の中核に関連付け、デザインについて経営メンバーと密
なコミュケーションを取る。
② 事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
デザイナーが最上流から計画に参加する。
③ 「デザイン経営」の推進組織の設置
組織図の重要な位置にデザイン部⾨を位置付け、社内横断でデザインを実施
する。
④ デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒
観察⼿法の導⼊により、顧客の潜在ニーズを発⾒する。
⑤ アジャイル型開発プロセスの実施
観察・仮説構築・試作・再仮説構築の反復により、質とスピードの両取りを
⾏う。
⑥ 採⽤および⼈材の育成
デザイン⼈材の採⽤を強化する。また、ビジネス⼈材やテクノロジー⼈材に
対するデザイン⼿法の教育を⾏うことで、デザインマインドを向上させる。
⑦ デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫
指標作成の難しいデザインについても、観察可能で⻑期的な企業価値を向上
させるための指標策定を試みる。

こんなことを言っていますけど、
簡単にいうと、

■デザインの経験者を経営陣に入れた方がいい
■企画段階からデザイナーが入った方がいい
■デザインはイノベーションを起こし課題を解決しうる前提でデザイン部署を作った方がいい
■デザイナーのもつ手法によってニーズを発見することをトライした方がいい
■トップダウンで計画通りやるのではなくて、試行錯誤しながらPDCAを回しましょう。
■デザイン経営ができる人材を増やしていきましょう。
■数字で見ないと信用できない人のためにデザインの効果を数字にすることをトライしましょう。

みたいなことを言っています。

デザイナーはこれらを実践することでイノベーションを起こせる。

なぜならデザイナーは、

. 観察の達⼈であり、顧客の潜在ニーズの発⾒を主導する

コトバにならないものをカタチにして開発サイクルを加速化する

こういうことができるからです。(と書いてあります。)

(^^ ;)となった経営者のために出されたのが今回特許庁から出た「BUSINESS PERSON’S GUIDE TO DESIGN DRIVEN MGMT. デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための”デザイン経営”ハンドブック」 です。

簡単にいうと↓

お金を使ったり稼いだりと言った市場のことは社会の中の一部のことだけど、

影響力絶大だから、市場を理解すると、社会を理解したようになってしまうがそうじゃない。

例えば「月の満ち欠けに人の人生を例える」と言った何の生産性のないことが

社会を構成する人の文化であったりする。

ネットが当たり前になってから、様々な情報や価値観が入り混じって

市場の評価だけで(数字だけで)社会を見ようとしたり予想しようとしてもまぁうまくいかない。

でも企業は市場の中にいるため、うまくいかない数字の考え方で動きがち。

でも企業には「デザインができる人」がいる。

ずっと前からいるけどこれがめちゃくちゃ重要で、広義のデザインができるならそれはUI UX ブランディング ビジョン 理念といったところまで総合的に設計ができることになるから。

デザイナーは数字だけでなく企業が忘れがちな文化や社会関係と言ってものも含めて企業と社会の接点を作れる存在だってことをもう少し知っておいた方がいいよ。

と言ってます。

50年代は見た目がカッコよければ良いデザインだった。 70年代はニーズを満たしたものが良いデザインだった。 現在のデザインは一言では言えなくなっていて、 複雑なサービスやシステムの設計に利用される考え方やツールとなっている。 登場人物の利害関係を把握した上で適切な施策を打つこともデザインともいえるようになっている。 と言うのも、 この20年以上の間に、 グローバル化、デジタル化が急速に進んだことや 大量生産大量消費のモデルで成長していた頃の名残のモデルがある中で、 一つのモデルで括れないような市場もたくさんあり、価値観も多様化したので ニーズというものを把握することすら難しくなっている。 デザインの考え方は「課題解決のための手段」と言われるけれど、 そもそも課題の定義が難しいし、できる経営者が少ない。 従来のアンケートなんかでは課題は抽出できない。 そこでデザイナーが現れる。 デザイナーはこれらの課題を把握するための考えに優れていて、 仮説も考えられる、試しに実験してどうかと調べることもする。 こういう時代なので、デザイナーも試すことなしにこれだというものを提示することはできない。 むしろデザイナーがあれこれ試すことそのものが重要となっている。 経営者はデザイナー視点による課題の把握と解決のための実験(デザイン)ができる環境を与えた方がいいなりよ。

と言っています。
おそらくここが一番言いたいことであとはあまり重要な話はありませんでした。

日本の企業はデザインにわりと取り組んでいるそうです。

うーん。。
ちょっと本当かなぁという統計ですね。
単純にデザイナーの定義をデザイン職種の人とするなら合ってるかもしれません。
一言でいうと、

デザイナー主体の部署を作っていたり
採用をしていたり、アジャイルプロセスでプロジェクトを推進したりと
そういうことをわりとやってる企業多いですよ
ってことを言っています。

また、従来のプロダクトのデザインだけではなくて、
顧客の体験をベースとしてサービスが企画されたり、
構想段階から課題を解決するためにデザイナーが起用されたりと、

最近ではデザイナーの役割も広くなっていいることが書かれています。

デザインとは

デザインとは…
様々な考えがある個人の方向性を見えるようにし議論を加速することであり、
何かを作るときにこのような作業は企画から必要である。
視覚的に見えるもの(例えばプロトタイプ)で共有し続ける体制のことともいう。

デザインとは…
もはや、対外的な見え方といういったブランディングまで対応することが増えている。
そのために社内でのブランディングの共有やメッセージを行うことも必要。
これが一貫していれば必然的にマーケティングがしやすくなりコストも下がっていく。

デザインとは…
本質的な課題に立ち向かうこと
本質的な課題は見つけにくいけど見つけたらビジネスチャンスになる

デザインとは…
使い勝手ではなくて、一人ひとりの主観的な美的感覚での共感である

とのことです。

KPIは立てなくていい…?

うーん、これを読んで「KPIがいらない」って全くならない気がするのですが、
「完璧に信仰するPLはいらない」だとしたらそうですね。
つまり、事前に調べてわかるデータからのPLの予測は難しく、
アジャイルで試行錯誤しながら物事を推進する必要があって、
デザインというものがそのプロセスですよってことを言いたいんだと思います。

勝ち筋は「文化」..?

翻訳↓

デザイン経営とは稼いだり見た目を整えるツールではない。

これからのサービスを考えるときに、

場当たり的に整えるためにデザインを使うのではよろしくない。

そのサービスの提供者はそのサービスによって解決される本質的な課題の当事者(関係者)であり、当事者性が高い方がよい。

社会の課題、その解決のためのサービス提供者、それを使う人、

それぞれがツリー型ではなく緩やかに横並びに存在する前提にたち

目に見えない要求や課題を可視化に整理する中でサービスを成り立たせること。

そのような文化を持つ組織がデザイン経営やデザインシンキングをしてると言える。

とのことですね。

全体的なまとめ

ただかっこいい”モノ”を作る職種がデザイナーではなく、
「何のために」「誰に」「誰と」「何を」「どのように」というところから
関わり、目的(課題解決)を達成する職種がデザイナーになっている。
それに伴い、社会の大部分に関わる経済に影響を与える企業とその経営者は、
デザイナーという職種のあり方の再考と、
それを前提としたデザイナーへの関わり方や組織づくり、
そして文化を作っていくことが必要。
それによって、現代のような多様化、コロニー化しつつも
曖昧で移り変わりの早いニーズのなかで生き残っていくことができるよ。

とのことです。