合同会社FIELDは、店舗マーケティングの理論を机上で終わらせず、自分たちで実店舗を運営して確かめることを続けています。その実践の場のひとつがラーメン店です。
このたび、その店舗で札幌オータムフェスに出店しました。出したのはラーメン、商品名は「きのこを食べてしまったしじみラーメン」です。
結果は、5時間で450杯。下の3本の映像は、当日の会場の様子です。
同じ会場に同じようにラーメンのブースが並ぶなかで、営業時間中、最も長く行列の状態を保ち続けたのは当店でした。この記事では、なぜそうなったのかという設計と、当日アルバイトのスタッフと一緒に取った数字を共有します。
なぜ「きのこを食べてしまったしじみラーメン」なのか
催事の会場では、お客様は歩きながら、並んだブースを一瞬で見比べて選びます。そこで看板に「しじみ塩ラーメン」のようなよくある表記を書くと、何が起きるか。
お客様は、その味をもう想像できてしまいます。想像できるものは、わざわざ並んで確かめる理由になりません。「しじみのラーメンね、だいたいこういう味だろう」で完結してしまい、来店の理由が生まれないのです。
そこで今回は、催事のためだけに商品を作り、特別な名前を付けました。
- 「きのこを食べてしまった」しじみとは何なのか、名前だけでは味を想像しきれない
- 想像しきれないから、確かめたくなる
- 確かめるには、食べるしかない
名前の役割は、商品を説明することではなく、来店の理由をつくることです。よくある表記は「わかりやすい」代わりに、選ばれる理由を消してしまいます。
当日、来場者と来店の関係を実測しました
売れた・売れなかったで終わらせないために、当日はアルバイトのスタッフに計測を頼み、ブースの前を通った来場者の数と、実際に来店(購入)した数を数えました。
条件は、目の前に選択肢(ラーメンのブース)が4つある状況です。その結果、おおよそ次の数字に落ち着きました。
| 時間帯 | 来場者 | 来店 | 来店率 |
|---|---|---|---|
| ピーク時 | 50人 | 1人 | 約2% |
| 通常時 | 100人 | 1人 | 約1% |
この数字が意味するのは、催事の予想来場者数がわかれば、来店数を予想できるということです。
たとえば、ある時間帯にブースの前を1万人が通ると見込めるなら、通常時の比率で約100人、ピーク時の比率で約200人の来店が見込めます(数字は計算の例です)。これがわかれば、仕込みの量も、スタッフの人数も、事前に決められます。催事の出店は「行ってみないとわからない」ものではなくなります。
ピーク時のほうが、来店率が高い
もうひとつ興味深いのは、人が多いピーク時のほうが、来店率が高かったことです。
人が多ければ、そのぶん素通りする人も増えるはずです。それでも比率が上がったのは、行列そのものが、次のお客様を呼んでいるからだと私たちは考えています。「並んでいる店はおいしいはずだ」という判断は、選択肢が並ぶ催事の会場ではとくに強く働きます。当店が営業時間中もっとも長く行列を保てたのも、この効果が重なった結果だと見ています。
なお、この数字は選択肢が4つある場合のものです。選択肢の数や、周囲のブースの顔ぶれが変われば比率も変わります。今回の値は、あくまで今回の条件で取れた概算です。
行列は「できる」ものではなく「保つ」もの
行列が次のお客様を呼ぶのなら、打つべき手は明確です。行列を途切れさせないことです。
そこで当日は、提供杯数のスピードを調整しました。一気に作って列をさばき切ってしまうと、ブースの前から列が消え、「並んでいる店」ではなくなります。反対に、提供が遅すぎればお客様を待たせすぎてしまい、列を見て諦める人が出ます。その間で提供のペースを整え、行列の状態を保ち続けることで、行列がさらなる行列を生む流れをつくりました。
- 列が消えると、「並んでいる店」という選ばれる理由も消える
- 待たせすぎると、列を見た人が離れていく
- だから、提供の速さそのものを集客の手段として調整する
催事では、商品名や看板といった「売る前の設計」だけでなく、当日の現場オペレーションまで含めた戦略が重要です。仕込み・調理・提供の段取りは、厨房の仕事であると同時に、マーケティングの一部でもあります。
本店でやっていることと、同じ構造です
実は、今回の出店でやったことは、本店でふだんやっていることと同じ構造をしています。
本店は、Google 検索(SEO)と Google マップ(MEO)で上位の順位を取れています。そのため、お店に関する検索ボリュームのおよそ0.6(6割)が、当店の情報を閲覧する状況になっています。
ただし、見られるだけでは選ばれません。検索したお客様は、必ずほかのお店と比較検討します。そこで本店では、比較されたときに選ばれる理由となるストーリーを用意しています。その結果、7席の小さな店舗で売上320万円、販管費60万円という、高い利益率の店舗を実現しています。
並べてみると、構造は同じです。
| 本店 | 催事(オータムフェス) | |
|---|---|---|
| まず見られる | SEO・MEO で上位表示し、検索ボリュームの約6割に閲覧される | 会場でブースの前を通る |
| 比較される | 検索結果・地図上のほかのお店 | 目の前の4つのブース |
| 選ばれる理由 | 比較検討で選ばれるストーリー | 味を想像しきれない商品名 |
| 結果 | 7席で売上320万円・販管費60万円 | 5時間で450杯 |
見られる → 比較される → 選ばれる。場所がネットでも催事の会場でも、お客様が店を選ぶ流れは変わりません。違うのは、それぞれの段階で打つ手だけです。
なぜ、マーケティングの会社が実店舗を運営するのか
マーケティングの理論は、説明するだけならいくらでも美しく書けます。しかし、本当にその通りにお客様が動くのかは、実際にお店を開けて、仕込みをして、売ってみないとわかりません。
だから私たちは、店舗マーケティングの理論を実証するために、実店舗を自分たちで運営して確かめています。今回の出店でも、商品名という仮説を立て、当日に来場者と来店の数を取り、次の催事で使える予測の数字まで持ち帰りました。
- 商品名で「来店の理由」をつくる
- 来場者と来店の比率を実測し、次の予測に使う
- 提供のスピードを調整し、行列を保つことで次の行列を生む
- ネットでも会場でも、「見られる → 比較される → 選ばれる」の流れで設計する
こうした設計は、飲食店に限らず、選ばれる理由を必要とするあらゆるお店・サービスに応用できます。
合同会社FIELDでは、実店舗での検証をもとにした店舗マーケティング(SEO・MEO・商品設計・催事出店の計画など)のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。